Accipiter Volume 17 (2011)

論文

渡良瀬遊水地におけるチュウヒの繁殖記録  市川計彦・内田孝男

渡良瀬遊水地は、面積が1,500haのヨシ原からなる広大な遊水地である。ここには毎年30羽以上のチュウヒが越冬するにも関わらず、チュウヒの確実な繁殖記録はなかった.しかし、2011年2月21日から7月13日にかけて、渡良瀬遊水地においてひとつがいのチュウヒの繁殖行動が観察された。6月13日には4卵のある巣がオギの優占する草原で発見され、さらに6月30日には孵化後約10日のヒナ2羽が確認された。ヒナはその後捕食されたが、この記録は渡良瀬遊水地における初めての確実なチュウヒの繁殖記録である。今回、渡良瀬遊水地でチュウヒが繁殖したのは、毎年3月中旬に実施されているヨシ焼きが3月11日に発生した東日本大震災のために実施されなかったためと考えられる。本研究から渡良瀬遊水地における春先のヨシ焼きは、本種の繁殖行動を阻害していることが示された。渡良瀬遊水地でのチュウヒの恒常的な繁殖のためには、ヨシ焼きの方法を一考する必要がある。

 

宇都宮市住宅地の小河川における水辺性鳥類5種の長期モニタリング  樋口弘

1993年1月から2010年12月の繁殖期(4~6月)と冬期(12~2月)に、宇都宮市の住宅地を流れる釜川約370mで水辺性鳥類のラインセンサスを合計108回行なった。調査地では、調査期間中にコサギ、カルガモ、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイの5種が記録された。これらのうち、カルガモは調査期間の後半の方が前半より有意に個体数が増加した。本種の個体数の増加の理由は、地域住民の給餌による本種の住宅地への分布拡大が考えられた。他の2種も記録個体数が多少変化したが、調査距離が短いことから実際の変化なのか見せかけの変化なのか判断できなかった。

 

宇都宮市の里地・里山における鳥類の長期モニタリングの1例  平野敏明

1993年から2011年の繁殖期に、宇都宮市郊外の鶴田沼緑地において鳥類のモニタリング調査を実施した。調査地では、調査期間中に合計39種の生息を確認した。記録された種は、疎林・草原性の種が46.2%と多く、ほかに湿原・水辺性の種が28.2%、森林性の種が25.6%であった。主要な14種の個体数を1990年代と2000年代後半とで比較すると、ホオジロやスズメ、ハシブトガラスでは有意な変化は得られなかったが、カルガモ、キジ、コゲラ、ヒヨドリ、ウグイス、シジュウカラ、ヤマガラの7種は2000年代後半には個体数が有意に増加した。一方、キジバト、オオヨシキリ、ハシボソガラスの個体数は、2000年代後半には1990年代より有意に減少した。また、オオヨシキリの雄の個体数は、年によって著しく変動した。こうした生息個体数の変化が認められた種の変化の原因については、良くわからなかった。しかし、これらの種のうち、増加したシジュウカラやヤマガラ、コゲラは調査地ばかりでなく、宇都宮市のほかの地域でも増加していることから、広域的な分布拡大や個体数の増加が理由と考えられた。また、ハシボソガラスの減少は、ハシブトガラスとの営巣場所をめぐる競合関係が示唆された。一方、オオヨシキリの雄の個体数は、調査期間中に著しく変動した。しかし、オオヨシキリの変動の時期とヨシ原の減少の時期が一致していなかったので、調査地以外のヨシ原の増減と関係していることが考えられた。本研究地の鳥類の個体数や種構成は、今後、ボランティア活動による調査地の植生管理や周囲の宅地化などによって変化することが予想され、継続してモニタリングすることがさらに重要になる。

 

渡良瀬遊水地における標識調査報告(2010)  深井宣男・吉田邦雄・山口恭弘

渡良瀬遊水地で実施している鳥類標識調査において、2010年は49種3,896羽が新放鳥され、16種191羽が再捕獲された。100羽以上新放鳥された優占種は、オオジュリン、アオジ、カシラダカであった。過去10年の平均と比較すると、オオジュリンとベニマシコが多く、カシラダカとアオジが少なかった。全体では種数は例年並みであったが、捕獲数は多かった。オオジュリンの優占度が著しく高かったほかは優占種の構成に変化はなかった。再捕獲例は、オオジュリンで同一シーズン内の移動回収が30例あった。

短報

渡良瀬遊水地におけるヨシゴイの越冬記録  大塚啓子

栃木県では夏鳥として生息するヨシゴイが、栃木市渡良瀬遊水地第1調節池で2010年1月20日と2011年2月4日の2越冬期に各1羽が記録された。これらの記録は、栃木県における始めての越冬期の記録と考えられた。

 

栃木県におけるクビワキンクロの初観察記録  町田好男

 栃木県大田原市羽田の羽田沼で、クビワキンクロの雄1羽が2011年5日に記録された。本記録は、栃木県における本種の始めての目視記録と考えられた。

観察記録

那須塩原市におけるヤイロチョウの観察記録  向井俊博

那須塩原市におけるコホオアカの記録  平野敏明

渡良瀬遊水地におけるクマタカの観察記録  小堀脩男

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