Accipiter Volume 19 (2013)

論文

宇都宮市の低山および丘陵における鳥類の生息状況の季節変動  樋口弘

 

栃木県宇都宮市の低山の本山と丘陵地の文化の森で2001年から2011年までの11年間に各季節1回(年4回),鳥類の生息種を調査した.調査期間中に本山では合計50種,文化の森では合計51種が記録された.季節別の記録種数の変化をみると,両調査地とも春季にもっとも多く,夏季や秋季に減少する傾向があった.森林面積が約3,500haと広い本山では,サンコウチョウやヤブサメ,エゾムシクイ,クロツグミ,オオルリ,キビタキの6種の森林性の夏鳥が記録されたが,森林面積の狭い文化の森ではキビタキだけが記録された.これら2か所の森林性の夏鳥の出現種の違いは,両調査地における森林面積の違いと関係していることが示唆された.記録回数に基づいた主要な種は,本山ではコゲラ,ハシブトガラス,シジュウカラ,ヒヨドリ,メジロで,文化の森ではカルガモ,キジバト,コゲラ,カケス,ハシボソガラス,ハシブトガラス,シジュウカラ,ヒヨドリ,ウグイス,スズメ,ホオジロであった.主要な種の季節的な記録回数の違いは,それぞれの種の生息環境の選好性や囀り活動などによる見つけやすさと深く関わっていることが推測された.

 

渡良瀬遊水地における繁殖期のアオジの生息状況  平野敏明

 

アオジは,栃木県ではおもに山地の低木林や疎林で繁殖するが,標高16mの平坦なヨシなどからなる渡良瀬遊水地でも近年になって繁殖期に生息するようになった.そこで,現在の渡良瀬遊水地における本種の繁殖期の記録をまとめるとともに,2007年から2013年に生息数の変化を調べるためにヤナギの低木林を含むヨシ原と河川敷林の林縁の2か所で1㎞のセンサスを行なった.アオジの巣立ち直後のヒナや巣を確認できなかったが,渡良瀬遊水地では2003年以降に本種の繁殖期である5月中旬から8月にアオジの生息を合計11例確認した.特に調査地1では2012-13年には1㎞あたり平均4.38羽が記録され,2007-2008年の平均1.00羽より多かった.さらに,調査地2では2010年以降に1つがいが記録され,2010年以降徐々に増加した.しかし,調査地1を除くと渡良瀬遊水地ではアオジの生息数は少ないと考えられた.本研究では、調査地におけるアオジの生息環境の選好性について調査を行なわなかった.そこで,アオジの繁殖要因を明らかにするために,今後,渡良瀬遊水地におけるアオジの繁殖期の環境選択や近縁種であるホオジロとの種間関係について調査する必要がある.

短報

宇都宮市で記録されたシノリガモについて  平野敏明・大塚啓子

 

2013年22日から26日にかけて,シノリガモの雌2羽が宇都宮市の市街地を流れる田川で観察された.本記録は,栃木県における4例目の記録であるが,平野部の都市河川における初めての記録である.

観察記録

栃木県那珂川町で観察されたブッポウソウの記録  伊吹信一

 

栃木県那珂川町で,ブッポウソウが2011年と2012年の5月下旬から6月上旬にかけて合計3例目視された.本記録は,近年における栃木県での数少ない確実な観察記録である.